外傷(Trauma)シリーズ4 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 18】

膵損傷(IIIa)(活動性出血).AAST pancreas grade III with active bleeding





図4と図5で膵体部に大きな断裂(↑間)があり,膵周囲から下方にかけて大きな後腹膜血腫(※)を形成している.図5〜図8の△と図6〜図8の▲はextravasationであり,2ヶ所からの活動性出血の可能性を意味する.出血量(計算法は下段に再掲)は図3の膵周囲で300ml,図6〜図14までの血腫(※)は簡単な体積計算をする.平均的な図9で8×15cm,さらに×9スライス=1080mlで,合計1380mlとなる.図5のIVCが虚脱しており,膵損傷に伴う大量出血によるhypovolemic shockである.T:膵尾部,B:膵体部,H:膵頭部.緊急手術で膵体部の完全断裂と離断面からの活動性出血(2ヶ所の出血部位かどうかは記載なし)を認め,止血し膵体尾部・脾臓合併切除が施行された.









出血量の計算法.腹腔内を1:肝周囲(右横隔膜下),2:脾臓周囲(左横隔膜下),3:Morison窩,4:右傍結腸溝,5:左傍結腸溝,6:小腸間,7:骨盤腔の7つの部位に分ける.腹水の厚さを各部位の平均的な場所でおおまかに計測し,1cm未満を50ml,1cm=100ml,1.5cm=150ml,2cm=200ml,2.5cm=250ml,3cm=300ml...5cm=500mlとし合計する.骨盤腔は比較的横径が狭いので半分値で計算する(例:前後に4cmあれば200ml).
参考症例(膵周囲出血):65歳女性.運転中の自損事故でハンドルで腹部を打撲,心窩部痛と嘔吐があり来院した.血圧:136/80mmHg,脈拍:88/分.上腹部に圧痛を認める.






図2で膵体部(B)と尾部(T)に損傷はないが,図3〜図5で膵頭部(H)の造影効果が低下しており,周囲に血腫(※)を認め,↑は部分断裂を示しているように見える.図5〜図10の△はextravasationであり,膵断裂と後腹膜出血と診断し緊急手術となった.膵頭部周辺で動脈性出血を認め止血し,膵頭部は血液が染みこんでやや腫大していたが膵損傷は認めなかった.







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