外傷(Trauma)シリーズ2 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 6】

肝損傷IIIa, AAST (American Association for the Surgery of Trauma) liver injury scale grade IV






図1〜図4で肝右葉に多発性の裂創が低吸収域として認められ,日本外傷学会肝損傷分類(下記)の,組織挫滅の少ない単純型深在性損傷(IIIa型)である.遊離ガスはなく,脾臓と膵臓(P)に損傷を認めない.腹水(※)は図1〜図3の肝周囲と,図3と図4のMorison窩に認めるが少量であり,extravasation(造影剤の血管外漏出)を認めないので保存的治療の適応である.しかし,図2〜図4で下大静脈周辺に見られる低吸収域すなわちperivenous tracking(pericaval halo sign:▲)は下大静脈や肝静脈の損傷を示唆する所見であり,厳重な経過観察を要する.LHV:左肝静脈,MHV:中肝静脈,RHV:右肝静脈.保存的治療で順調に経過し,Hbは12.9g/dlから9.2g/dlに低下した.下段の図A〜図Cは2週間後のCTで,裂創部の血腫はほとんど吸収されている.




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参考症例(肝損傷 Ib+II):58歳男性.建築作業中に約2mの高さから転落し,右胸腹部を打撲した.Vital signsは安定している.Double phase造影CTである.








肝損傷(早期相:↑,晩期相:白矢印)があるが,腹水(出血:※)は図6と図7で少量だけであり,extravasationを認めない.Double phase造影CTでextravasationを認めず,出血量が1000ml以下であれば保存的治療が成功する可能性は極めて高い.図4と図8の△は門脈枝で,図9と図10の▲は晩期相の図13と図14でdensityと大きさに変化を示していないので何らかの石灰化像であるとの判断もdouble phase造影CTだから可能である.安静のみで順調に経過した.Hb:15.7→14.7g/dl.








  【参照症例】   1. 日本外傷学会 肝損傷分類2008

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