図1〜図4で肝右葉に多発性の裂創が低吸収域として認められ,日本外傷学会肝損傷分類(下記)の,組織挫滅の少ない単純型深在性損傷(IIIa型)である.遊離ガスはなく,脾臓と膵臓(P)に損傷を認めない.腹水(※)は図1〜図3の肝周囲と,図3と図4のMorison窩に認めるが少量であり,extravasation(造影剤の血管外漏出)を認めないので保存的治療の適応である.しかし,図2〜図4で下大静脈周辺に見られる低吸収域すなわちperivenous tracking(pericaval halo sign:▲)は下大静脈や肝静脈の損傷を示唆する所見であり,厳重な経過観察を要する.LHV:左肝静脈,MHV:中肝静脈,RHV:右肝静脈.保存的治療で順調に経過し,Hbは12.9g/dlから9.2g/dlに低下した.下段の図A〜図Cは2週間後のCTで,裂創部の血腫はほとんど吸収されている.
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