その他(Miscellaneous)シリーズ10 RESIDENT COURSE 解答 【症例 MR 46】

胃動静脈奇形. Arteriovenous malformation of stomach





腎臓の髄質と下大静脈がまだ造影されていないので動脈相の造影CTである.図6と図7で胃大弯側の後壁よりに極めて強く造影される病変がある(▲).動脈相でかなり血流の豊富な病変だから血管性病変の可能性を示唆する.Extravasationは認めない.図Aは内視鏡所見で,粘膜下腫瘍を示唆する隆起性病変があり(△),表面の発赤を伴う.図Bと図Cは血管造影で,↑が病変(動静脈奇形)で, ▲が早期静脈還流(early venous drainage).側副路が発達しているためTAEは困難と判断し胃部分切除を行った.病理:胃動静脈奇形arteriovenous malformation.




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文献考察:腸管のAVM
1)【腸管の血管性病変 限局性腫瘍状病変を中心に】 最近10年間(1990〜1999)の本邦報告例の集計からみた消化管の血管性病変(Table 1,Table 4)
  Author:古賀秀樹(川崎医科大学 第2消化器内科), 飯田三雄, 垂水研一
  Source:胃と腸(0536-2180)35巻6号 Page743-752(2000.05)
要旨:AGD(angiodysplasia)とAVM(arteriovenous malformation:動静脈奇形)は混同して用いられていることが多く,同義語として扱っている臨床論文が多い.病理学的には全く異なる疾患概念である.AGDは薄い血管壁から成る内弾性板を持たない静脈の特徴を持った異常血管が蛇行した病変であり,AVMは肥厚した血管壁から成り,弾性線維染色にて内弾性板を持った動脈の特徴を有する血管と内弾性板を持たない静脈の特徴を有する血管が相互連絡をしている病態である.

2)【腸管の血管性病変 限局性腫瘍状病変を中心に】 腸管動静脈奇形 自験12例と本邦報告例の解析
Author:小林清典(北里大学医学部附属東病院 消化器内科), 五十嵐正広, 勝又伴栄, 横山薫, 佐田美和, 西元寺克禮, 大谷剛正, 三富弘之, 磯部義憲, 古波倉史子, 草野正一
Source:胃と腸(0536-2180)35巻6号 Page753-761(2000.05)
Abstract:主症状は,病変部からの反復する出血であり, 時に大量でショック状態をきたし, 輸血が必要になる場合も多い. 診断には選択的血管造影が有用であるが, 大腸病変に対しては内視鏡検査の担う役割も大きい. 治療は,外科的切除が原則であるが, 重篤な合併疾患等により手術が困難な場合は, 血管カテーテルを用いた治療や内視鏡治療も積極的に行われる. 人口の高齢化や欧米型腸疾患の増加等により, 本邦でも患者数の増加が見込まれ, 原因不明の消化管出血をみた場合は, 本症の存在も念頭に置いて検索を進める必要がある.
追記:本邦報告例230例の解析から,年齢は6歳から90歳まで,加齢とともに増加し60歳台が28%を占める.男女差はない.病変部位は空腸:24%,回腸:19%,右側結腸:37%,左側結腸:11%,直腸:8%,広範囲:3%.単発例が85%と多く,多発例は15%.治療は外科的腸切除が79%に行われ,内視鏡治療:10%,血管カテーテルを用いた治療(動脈塞栓術,vasopresin動注)が8%であった.

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