下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 3】

S状結腸癌の口側部穿孔.sigmoid colon perforation at proximal site of sigmoid cancer








図1〜図4で前腹壁直下に遊離ガスがあり(↑),図1で肝臓と脾臓周囲に,図18と図19で骨盤腔内に腹水がある(※).主訴が下腹部痛だから図19の直腸1から逆行性に追跡すると,図15の27から下行結腸となり頭側へ上行する.図5のS状結腸15の▲からよく造影される壁肥厚が始まり図7の17(▲)〜図10の20の腫瘤となり腫瘍性病変を強く示唆する.図7〜図13の△のガス様の黒色物は点状の高濃度の白色固形物を含み,辺縁に腸管壁を認めず腸管外糞便である.従ってS状結腸癌が関与する穿孔と診断する.図5と図6の↑も遊離ガスである.手術でS状結腸癌を認め,その口側30cmの部位での穿孔であった.大腸癌口側の穿孔は閉塞性大腸炎obstructive colitisによるものといわれる.












文献考察:閉塞性大腸炎(obstructive colitis)
岩浅武彦,牧内正夫:閉塞性大腸炎,消化管症候群(下巻) 別冊 日本臨床 領域別症候群6:645−648,1994.
閉塞性大腸炎(obstructive colitis)は,大腸癌などによる大腸の機械的狭窄部の口側の拡張腸管粘膜に発生する非特異性炎症性の潰瘍性病変である.頻度は全大腸癌の1%,閉塞性大腸癌の10%程度.特徴は,1.癌などによる大腸の閉塞がある.2.本症の潰瘍性病変は閉塞の口側に限局して存在する.3.閉塞の肛門側粘膜は肉眼的にも組織学的にも正常である.4.癌と潰瘍性病変は組織学的に明確に境されていて,癌と潰瘍の間には必ず正常粘膜の部分が介在する.5.潰瘍性大腸炎,Crohn病,アメーバ赤痢などの炎症性疾患の既往を認めない.6.閉塞部の除去により本症の再発が起こらない.

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