文献考察:自然腎盂外(尿)溢流 spontaneous peripelvic extravasation 自然腎盂外溢流の臨床的検討
Author:奥村昌央(富山医科薬科大学 泌尿器科), 藤内靖喜, 横山豊明, 乗杉理, 渡部明彦, 布施秀樹
Source:泌尿器科紀要(0018-1994)46巻5号 Page297-300(2000.05)
Abstract:10例を経験したが6例は尿管結石に起因するものであり,他の4例は悪性腫瘍によるものであった.後者の場合,予後は不良であり診断及び治療に特別な配慮が必要であると思われた
追記:自然腎盂外溢流とは,明らかな外傷を認めず,また腎疾患を伴わずに尿が腎盂外に溢流する比較的まれな疾患である.定義はSchwartzら(Am J Roentgenol 98:27-40,1966)は以下の項目を定めている.1:最近尿管への機械的操作を受けていない,2:以前に外科的手術を受けていない,3:外傷の既往がない,4:破壊的腎病巣がない,5:体外からの尿管圧迫がない,6:結石による腎盂あるいは尿管の圧迫壊死がない.腎盂内圧の上昇に伴い腎盂粘膜の最も脆弱な部位である腎杯円蓋部に亀裂が起こり,そこから尿が流出するとされる.鑑別すべき疾患に自然腎盂破裂があるが,自然腎盂破裂は円蓋部とは異なった部位での破裂であり,画像で破裂部位を確認できることが多い.観血的治療を行った場合は肉眼的に破裂部位を確認できる.また,腎盂破裂では自然腎盂溢流に比べ重篤で,観血的処置を要することが多い.尿管結石が原因の場合は治療としてESWLが積極的に行われる.159例の本邦報告例で,年令は5〜81歳(平均53.2歳),患側は左104例,右52例(不明10例),男女比は104:39(不明16例)と男性に多い.原因疾患は尿管結石が最も多く84例,尿路生殖腫瘍が21例,尿路外腫瘍23例,尿路閉塞疾患が10例,その他21例であった.
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