その他(Miscellaneous)シリーズ6 EXPERT COURSE 解答 【症例 ME 29】

十二指腸(静脈瘤)出血.Duodenal (varices) hemorrhage






肝臓は脾臓より造影効果が低いので脂肪肝であり,やや萎縮性で,辺縁も不整な部分があり,肝硬変と診断してよい.図1と図2で小さい食道静脈瘤を3本認める(↑)が,extravasationはなく,胃内に血腫を認めないので出血源の可能性は低い.図5〜図15の△は十二指腸内のextravasationで,図6〜図15の▲は上部空腸内へのextravasationであり,出血病変は認識できないが十二指腸が出血部位の可能性が極めて高い.内視鏡検査で十二指腸静脈瘤からの出血を認めた.食道静脈瘤も存在したが出血はなし.










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参考文献:十二指腸静脈瘤
【知っておくべき疾患 十二指腸】 十二指腸静脈瘤
  Author:宮島伸宜(帝京大学医学部附属溝口病院 外科), 田尻孝, 山川達郎
  Source:臨床消化器内科(0911-601X)15巻9号 Page1243-1248(2000.07) 
十二指腸静脈瘤はまれな疾患ではあるが,いったん破裂 出血をきたすと致命的になる可能性がある.また,基礎疾患に肝硬変や門脈圧亢進症をもつ場合が多いので,治療方針の決定に難渋する場合も多い.診断には上部消化管内視鏡検査,腹部CTscan検査が有用であるが,腹部血管造影や経皮経肝門脈造影を行えばさらに確実である.治療は内視鏡的硬化療法や静脈瘤結紮術のほかに経カテーテル的門脈塞栓術,手術によるシャント術などがあるが,いずれもー長一短である.各症例の肝予備能などを十分に検討し,治療方針を決定する必要がある.また一次止血に成功しても再出血の危険があるため,十分な経過観察が必要である.

文献考察:十二指腸静脈瘤,本邦報告例153例の検討
十二指腸静脈瘤に結紮術及び術中硬化療法が有用であった1例
  Author:牧野洋知(藤沢市民病院), 国崎主税, 舛井秀宣, 渡会伸治, 嶋田紘
  Source:日本消化器外科学会雑誌(0386-9768)32巻12号 Page2664-2668(1999.12)
  Abstract:65歳男.肝硬変の診断で他院にて加療中,下血を認め,Hb4.9g/dlの貧血を呈し精査目的で入院となった.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に静脈瘤を認めた.低緊張性十二指腸造影検査では,同部位に境界明瞭,表面平滑な陰影欠損として描出された.経皮経肝門脈造影で,後下膵十二指腸静脈が主たる流入路,精巣静脈が流出路で下大動脈とのシャントを認めた.後下膵十二指腸静脈に対し経皮経肝門脈塞栓術を施行した.一旦軽快退院となったが,術後約2ヵ月後に下血・貧血が再度認められたため,再入院となった.精巣静脈造影検査で,十二指腸静脈瘤が残存していたため,開腹下に静脈瘤を結紮切除後,残存した静脈瘤内にエタノールアミンオレイトを注入し,術中硬化療法を施行した.術後2年経過した現在再発なく経過良好である.
本邦報告例153例の検討(Table2とTable3).

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