その他(Miscellaneous)シリーズ4 EXPERT COURSE 解答 【症例 ME 20】

横行結腸軸捻転.Volvulus of transverse colon








図1と図2の腹部単純写真でガスで拡張した腸管はI〜Vと連続するが,図2の▲でIとVは連続しないで閉塞する.NG tubeが右方に変位し拡張した腸管により胃が圧排されている.図3のAと1を追跡するとAは図13のLとなり閉塞する.1は図12の25となり閉塞する.図17〜図19で数字通りに連続するか確信は持てないが,腹部単純写真図2の所見を参考にすれば図のごとくになる.図12の下行結腸D1を頭側へ追跡すると図10のD3から図11の,whirl signを伴う虚脱した腸管△に連続する.図10に糞便を含む腸管aがあり,それは図6のc でUターンし,図9のd から上行結腸となるので,拡張した腸管は図11の△でclosed loopを形成しており,横行結腸の軸捻転と診断する.大腸捻転の診断で手術となり,開腹したら横行結腸と下行結腸が時計方向へ360度捻転しており,壊死に陥っていた(図A) .












文献考察:横行結腸軸捻転
横行結腸軸捻転症の1例 本邦報告40例の検討
  Author:山内聡(いわき市立総合磐城共立病院), 和田靖, 土田忍, 新谷史明
  Source:日本救急医学会雑誌(0915-924X)12巻9号 Page476-480(2001.09)
  Abstract:81歳男.主訴は腹痛.慢性便秘のため排便は浣腸に依存し,老人性痴呆があり一日中臥床していた.入院時腹部は膨隆し反跳痛,筋性防御を認めた.腹部単純X線,CT,超音波検査から腹膜炎を合併した大腸イレウスと診断して緊急開腹手術を施行した.横行結腸中央部と上行結腸彎曲部との間に索状物を認め,横行結腸が360度捻転し壊死に陥っていた.索状物と壊死部分を切り離して側側吻合で再建した.術後経過は順調で術後8病日から経口摂取を開始して20病日に転院した.索状物が形成され,慢性便秘と長期臥床が発症の誘因となったと考えられた.
追記:発症年令は生後6日から89歳まで(平均42.9歳),20歳以下と60歳以上に多くみられ,男女比は23:17.随伴疾患として,精神発達遅滞,慢性便秘がそれぞれ13例,腹部手術の既往が10例に認められた.精神発達遅滞,便秘と向精神病薬の服用は慢性の腸管運動障害による腸管の拡張が起こり,過長な腸間膜が形成され,大腸の可動性が増大し捻転が起こりやすくなる.40例中21例が術前に横行結腸軸捻転症と診断されており,15例が注腸透視,5例が腹部単純X線,1例が大腸内視鏡で診断されており,注腸造影が有用である.大腸内視鏡整復は5例に施行され2例が成功している.捻転発生の原因として,腸管の過長症が20例,腸管の固定不十分な症例が11例,索状物が5例,癒着が2例に認められている.

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