その他(Miscellaneous)シリーズ4 RESIDENT COURSE 解答 【症例 MR 17】

腹部大動脈瘤破裂. AAA rupture



図4〜図11の↑は最大径5cmを超える腹部大動脈瘤である.図4〜図12の▲は後腹膜血腫で,動脈瘤の破裂を強く示唆する.図7〜図10の,高濃度の三日月型陰影(△)は典型的なcrescent signであり,動脈瘤破裂をさらに裏付ける所見である(下記文献).単純CTだからextravasationはわからない.緊急手術で右後腹膜腔に血腫を認めたが,活動性の出血はなかった.人工血管(Yグラフト)置換術を行った.






参考症例(腹部大動脈瘤切迫破裂):63歳男性.10年前に腹部大動脈瘤を指摘されたが放置していた.12時間前に発症した持続性の左背部痛のため夜間に来院した.熱はなく,血圧:168/100mmHg,脈:72/分.
最大径約8cm大の腹部大動脈瘤(図9)を認めるが,周囲にextravasationや血腫を認めないので破裂はしていない.CTで背部痛の原因となる他の疾患は否定的で,整形外科的にも有意な所見を認めなければ瘤の切迫破裂として扱うべきである.降圧剤で収縮期血圧を120mmHg以下にコントロールし,翌日手術(人工血管置換術)を行った.
















文献考察:crescent sign
Radiology. 1999 Apr;211(1):37-8.
The hyperattenuating crescent sign.
Gonsalves CF.

三日月徴候(crescent sign)とは,単純CTでは三日月型の,動脈血または動脈瘤内の古い血腫よりdensityの高くなった部分で,新鮮な血腫を意味し,古い血腫または動脈瘤壁内に血管腔から解離が起こっている現象で,腹痛や腰痛などの症状がなくても切迫破裂と判断すべき所見である.造影CTでは認識しにくくなるが,近辺の腸腰筋よりdensityの高い陰影となる.

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