文献考察:アルコール依存症と脚気
1)アルコール関連身体疾患 ビタミン代謝異常(解説/特集)
Author:橋詰直孝(東邦大学医学部附属大橋病院)
Source:日本臨床(0047-1852)55巻特別 Page205-209(1997.02)
2)急性腹症,著明な乳酸アシドーシスを呈し,開腹術に至ったビタミンB1欠乏症の1例(原著論文/症例報告)
Author:広瀬保夫(新潟市民病院), 遠藤裕, 丸山正則, 他
Source:日本救急医学会雑誌(0915-924X)4巻4号 Page339-343(1993.08)
2文献の要旨:アルコール依存症患者はアルコールによるビタミンB1吸収障害に加え,偏食,食餌摂取不良による低栄養からビタミンB1欠乏症が起こる.ビタミンB1欠乏症により代謝性アシドーシスからショックを呈する病態は衝心脚気と呼ばれる.ビタミンB1欠乏症により糖の好気的代謝に失調が生じ,乳酸とピルビン酸の蓄積をもたらし乳酸アシドーシスになる.そのため細動脈は拡張し末梢血管床は増大し,循環血液量の増大をきたす.激症型の衝心脚気では心拍出量が増加し高拍出性心不全となるのが特徴であり,著明な乳酸アシドーシスを伴い,ビタミンB1を投与しない限り死亡することもある.脚気では30〜50%に上腹部不快感,胸焼けや便秘などの消化器症状を伴うが,Auerbach神経叢の変性,副交感神経の機能低下によると考えられており,この症例のように高拍出性心不全と麻痺性イレウスを呈したり,急性腹症として発症し開腹された報告もある.
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