遊離ガスはないが,図1の肝周囲と図10〜図12の骨盤腔内に腹水(※)がある.図10〜図12で腹水周囲の腹膜が造影されている(↑)のは汚染された腹水であることを示唆し,腹膜炎を意味する場合が多いので,遊離ガスはなくても下部消化管穿孔がないかを確認する必要がある.直腸から下行結腸は図12の1から数字順に展開する.S状結腸図9の4〜図2の下行結腸25は浮腫性に壁肥厚を呈しているのも腹膜炎を示唆する.図8の19〜図5の22の▲は他の部分より強く造影されておりS状結腸癌の可能性が高い.腸管穿孔を裏付ける所見は図5と図6の△である.ガスと液状物質を含み一見腸管に見えるが,図4と図7で連続する腸管がなく盲端になっており,その周辺の脂肪組織の炎症所見を反映する腸間膜の浮腫もある.一見腸管に見えて,実は腸管外の液貯留の所見は腸管穿孔例に決してまれではないので最大限の注意を要する.翌日腹膜刺激症状を呈したので開腹したらS状結腸癌があり,癌部の穿孔であった.
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