その他(Miscellaneous)シリーズ1 EXPERT COURSE 解答 【症例 ME 2】

下行結腸憩室出血.Bleeding descending colon diverticulosis






図4と図5で右側結腸(▲)は普通便を含み,小腸または盲腸が出血部位である可能性は否定していい.単純CT図7〜図15の下行結腸と直腸の※は血腫または血液で,造影CT図4〜図12の△はextravasationで,図8と図9に憩室(↑)があり,下行結腸憩室の出血である.入院後は黒色の凝血塊を含む排便が1回だけあった.大腸ファイバー検査で下行結腸からS状結腸に多発性の憩室を認めたが活動性の出血はなく,明らかな出血源は指摘できなかった.






文献考察:大腸憩室内出血
[消化管出血と緊急内視鏡] 大腸憩室内出血
田中三千雄(富山医科薬科大学 光学医療診療部), 薄田勝男, 伊藤博行, 七澤洋,
救急医学 28巻6号 693-695, 2004

要旨:憩室には壁が腸管壁の全層からなる真性憩室と,固有筋層を欠く仮性憩室とがあるが,大腸憩室の大部分が仮性憩室である.70〜80%が多発性で,発生部位は右側型が約70%,左側型が15%,両側型が約15%である.直動脈(vasa recta)が結腸の筋層を貫く部位が内圧上昇に対する抵抗性が弱く,ヘルニアを起こす.従って憩室発生部位には動脈が存在し,憩室頚部から憩室底に豊富な血管網を形成する.腸管内圧上昇などに伴う反復する機械的刺激が血管内皮の肥厚や脆弱化をもたらし,出血に至ると考えられている.大腸憩室からの出血は突然に発症し,腹痛を伴うことはほとんどない.ショックに陥るほどの大量出血はまれで,自然に止血する傾向が強いものの,繰り返して出血する症例は多い.下血の色は,右側結腸型でやや黒みを帯び,左側結腸型では鮮紅色に近い傾向にある.

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