文献考察:大腸憩室内出血
[消化管出血と緊急内視鏡] 大腸憩室内出血
田中三千雄(富山医科薬科大学 光学医療診療部), 薄田勝男, 伊藤博行, 七澤洋,
救急医学 28巻6号 693-695, 2004
要旨:憩室には壁が腸管壁の全層からなる真性憩室と,固有筋層を欠く仮性憩室とがあるが,大腸憩室の大部分が仮性憩室である.70〜80%が多発性で,発生部位は右側型が約70%,左側型が15%,両側型が約15%である.直動脈(vasa recta)が結腸の筋層を貫く部位が内圧上昇に対する抵抗性が弱く,ヘルニアを起こす.従って憩室発生部位には動脈が存在し,憩室頚部から憩室底に豊富な血管網を形成する.腸管内圧上昇などに伴う反復する機械的刺激が血管内皮の肥厚や脆弱化をもたらし,出血に至ると考えられている.大腸憩室からの出血は突然に発症し,腹痛を伴うことはほとんどない.ショックに陥るほどの大量出血はまれで,自然に止血する傾向が強いものの,繰り返して出血する症例は多い.下血の色は,右側結腸型でやや黒みを帯び,左側結腸型では鮮紅色に近い傾向にある.
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