その他(Miscellaneous)シリーズ1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 MR 2】

S状結腸憩室出血.Bleeding sigmoid diverticulosis



図1〜図3で右側結腸(▲)は普通便とガスを含み,大量下血であれば小腸や盲腸が出血源である可能性は極めて低い.図7の1〜図1の12は直腸とS状結腸である.造影CT図4〜図6のS状結腸内の△は,最下段の単純CTでは描出されていないのでextravasationであり,多数の憩室(↑)を認めるのでS状結腸憩室の出血と診断する.図8〜図11の直腸とS状結腸の内容物(※)は均一で,ややdensityが高く,ほとんどガスを含まず,血腫であろう.緊急大腸ファイバー検査を行ったが,直腸とS状結腸内に多量の凝血塊を認めた.血圧が低下したので出血部位を確認できないまま検査を中止した.4単位の輸血と輸液で血圧は回復し再度大腸ファイバー検査を行ったが,自然止血しており出血部位の確定はできなかった.S状結腸に多発性の憩室を認めた.








文献考察:lower GI bleeding
Bass BL、Turner DL:Acute Gastrointestinal Hemorrhage,In:Sabiston's Textbook of Surgery,17th Ed,WB Saunders,Philadelphia,1255-1264,2004

要旨下部消化管出血とはTreitz靱帯より肛門側からの出血をいうが,95〜97%は大腸からの出血で,残りの3〜5%は小腸の出血である.全消化管出血の15%で,上部消化管出血よりかなり頻度は低いが,年令が増すに従って憩室とangiodysplasiaの頻度が高くなるので下部消化管出血の頻度も高くなる.上部消化管出血の15%の症例で,短時間に1,000ml以上の出血例で鮮血便(hematochezia)を呈することがあるので注意を要する.上部消化管出血ほどショックになる頻度は高くなく,自然止血する場合が多い.出血源の確定診断は上部消化管出血の内視鏡検査ほど高くない,理由は,1:下部消化管出血は間欠的に出血する例が多く,検査の時には自然止血している場合が多い,2:42%の症例で出血源として可能性のある病変が複数発見される.原因疾患は,憩室症:40〜55%, angiodysplasia(AVM:arteriovenous malformation):3〜20%,腫瘍性病変(癌,polyp):20%,炎症性疾患(潰瘍性大腸炎,出血性腸炎,放射性腸炎):15%, 血管病変(虚血性腸炎,血管炎,腸間膜虚血):まれ,hemorrhoids:2%以下.

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】