症例 ER 99 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 99】

糞線虫症strongyloidiasis




図1〜図3に腹水がある(↑)。広範囲の小腸が粘膜下浮腫による3層構造(よく造影される粘膜、低濃度の粘膜下浮腫と外側の造影される固有筋層)を呈している。A:上行結腸、D:下行結腸、S:S状結腸。腹水から糞線虫が検出され重症型の糞線虫症strongyloidiasisと診断された。患者は髄膜炎と敗血症を合併し死亡した。












糞線虫症strongyloidiasisは土壌から経皮的に感染し、主として十二指腸や上部小腸に寄生する、1〜2mm大の糞線虫strongyloides stercoralisによって引き起こされる寄生虫感染症である。亜熱帯地域に位置する沖縄県と鹿児島県の奄美地方が主な浸淫地であり、同地域出身者の腹部症状の鑑別診断に忘れてはならない疾患である。通常無症状に経過することが多く、症状はあっても軽微で下痢と軽度の腹痛を呈するだけである。しかし、感染防御機能が低下した時過度に増殖し播種性糞線虫症disseminated strongyloidiasisと呼ばれる重篤な状態になり死に至ることも少なくない。

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