図1でガスで拡張した腸管(※)はKerckring襞を認めず,大腸と思われ,coffee bean signと解釈できるのでS状結腸捻転を診断してみる.図2のA1が肝臓前面から右横隔膜下へはまりこんだ腸管(Chilaiditi’s syndrome )の頂点部で,そこから尾側へ追跡すると図19のRと18となり閉塞するのでclosed loopを形成している.図20の虚脱した直腸REは図15で14と連結し,図14のDCが下行結腸と思われ,どちらも閉塞部位近くに収束するのでS状結腸捻転である.見逃してはいけないのは図2〜図12の壁内気腫(△)である.高度の虚血または壊死を意味する場合が多いので,腹膜刺激症状を認めなくても保存的な捻転解除を考慮せず即刻手術すべきである.AC:上行結腸.腹部は板状硬を呈していたので緊急手術となった.S状結腸が時計回りに180度捻転し約60cmにわたり壊死に陥っていた(図A).手術記録に捻転を解除(detorsion)し切除したと記載されているが,壊死に陥った腸管は捻転を解除せず捻転したまま切除,または静脈を含めた血管に鉗子をかけてから捻転解除すべきである.壊死腸管の静脈内にはエンドトキシンや腸内細菌が含まれていると用心してかかるべきで,捻転を解除するとそれらが全身に循環しショックや敗血症を起こすことがある.患者はCOPDに肺炎を合併し死亡したが,壊死腸管の捻転解除が術後の重症化を助長した可能性は否定できない.
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