腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)8 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 37】

腹部大動脈瘤破裂.Rupture of AAA(Abdominal Aortic Aneurysm)






図1〜図3の※は十二指腸を前方へ偏移させ後腹膜内の血腫である.図6〜図15の▲は腹部大動脈瘤(図13で最大径12cm)で,図4〜図14の△はextravasation(造影剤の血管外漏出)であり,図11の△が破裂部位である.図1でIVCは扁平化し(flat IVC)大量の循環血液量不足状態である.CT撮影後まもなく再度血圧測定不能となり患者は死亡した.ショックで来院した患者で,注意深く腹部を診察すれば大動脈瘤を触れたはずであり,腹部エコーで瘤と周囲の血腫を証明して即刻手術室へ運ぶべきで,CT検査は不要である.









文献考察:腹部大動脈瘤
1)Ruthberford RB:Recommended standards from reports on vascular disease and management. In :Callow / Ernst's Vascular Surgery: Theory and Practice. Appleton & Lange. Connecticut. 1145-1159, 1995
2) Sabiston Jr DC: Aortic abdomonal aneurysm. In: Sabiston's Textbook of Surgery. 15th ed. WB Saunders. Philadelphia 1665-1672. 1997

要旨:動脈瘤(Aneurysm)とは正常の大きさの50%以上局所的に拡張した状態(正常な腹部大動脈は平均2cmだから3cm以上のもの,それ以下は拡張:Ectasiaと呼ぶ)をいい,ほとんどが粥状硬化性動脈瘤である.95%が腎動脈より1〜3cm末梢に発生するが,他方総腸骨動脈に及ぶ頻度は91%と高い.
 腹部大動脈瘤の合併症には次のようなものがある.1)破裂:最も多い,最も重大な合併症である,2)動脈瘤内に生じた血栓の末梢動脈への塞栓症,3)動脈瘤の急激な血栓症,4)動脈瘤の感染,5)慢性のDIC,6)動脈瘤腸管瘻,7)動脈瘤下大静脈瘻.
  【参照症例】   1. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 5 【症例 LR 24】
2. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 9 【症例 LR 42】

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】