腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)6 EXPERT COURSE 解答 【症例 GE 29】

回腸悪性リンパ腫.Malignant lymphoma of ileum






小腸内糞便が閉塞部位を示唆することが多いので図1の1から尾側へ追跡すると,図8の8から壁肥厚が始まり(△),図11の11で全周性の腫瘤(△)となる.図1の盲腸(CE)から分岐する回腸末端Aを尾側へ追跡すると図8のHあたりから腫瘤となり,盲腸から7cm程の部位から始まる腫瘍性病変と診断する.全周性で,長さは10cmを超え,大きな病変であるのに数時間前まで症状がなかったことは伸展性の良好な病変を意味し,部位が回腸末端であることから悪性リンパ腫であろう.図1〜図3の▲は異常所見ではなかった.手術で盲腸から10cmの部位で15cm長の壁肥厚した病変があり切除した(図Aは術中写真の漿膜面,図Bは切除標本の粘膜面) .病理: malignant lymphoma,B cell type.








文献考察:小腸腫瘍本邦報告例の集計
【小腸腫瘍 分類と画像所見】 小腸腫瘍 最近5年間(1995〜1999)の本邦報告例の集計(原著論文/特集) 
Author:八尾恒良(福岡大学医学部附属筑紫病院 消化器科), 八尾建史, 真武弘明, 古川敬一, 永江隆, 本村明,
  菊池陽介, 高木靖寛, 嶋津剛典, 頼岡誠, 久部高司, 八尾哲史, 西村拓, 蒲池紫乃, 竹下宗範, 永本和洋, 諸隈一平,
  櫻井俊弘, 松井敏幸
Source:胃と腸(0536-2180)36巻7号 Page871-881(2001.06)
Abstract:過去5年間の小腸原発性腫瘍の報告例(約480例)を抽出・集計し,20年前の集計と比較した.組織型別頻度は, 癌157例(32.6%), 悪性リンパ腫146例(30.4%), 平滑筋肉腫140例(29.1%), 悪性神経原性腫瘍8例(1.7%), カルチノイド8例(1.7%), その他22例が続き, 組織別悪性腫瘍の明らかな増加傾向はなかった.病変の存在部位は, 良・悪性とも, Treitz靭帯およびBauhin弁より離れた部位で多い傾向にあった.消化管間質性腫瘍における免疫染色が行われた報告は, 1998年度以降では, 約半数の24例(53.3%)であった.前回の集計と比較すると,平滑筋腫の頻度がやや高率であったが, その他,腫瘍の大きさ, 臨床症状などに大差はなかった.

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