図1で肝臓と脾臓周囲に,図9で骨盤腔内に少量の腹水がある(※).左側の小腸(↑)は拡張がないため追跡不可能でclosed loopの診断はできない.しかし強い腸間膜の浮腫があり(▲),血管の怒張があり(図4:△),壁の造影効果が乏しく,腹水を含め4所見あるので絞扼性小腸閉塞を疑うべきである.診断を確定するには,経鼻胃管からガストログラフィンを投与すれば単純閉塞の腸管と絞扼性小腸閉塞の腸管との鑑別が容易となる.腸管液で薄まることを予測して10%程度(例:300ccの生食水に30ccのガストログラフィン)に希釈して200〜300cc投与後2,3時間後にCT検査を行う(上腹部痛シリーズResidentコース症例ER22参照).↑の腸管にガストログラフィンを認めなければ,小腸が部分的に腸間膜浮腫を伴っているのでclosed loopの可能性が極めて高くなる.CT所見で手術になった.大網と腸間膜間にバンドが形成され,そこへ約100cm程の空腸が絞扼されており,壊死のない虚血状態であった(図A:↑の間)が温生食ガーゼで温めたら色調が回復し,腸切除は不要であった.図Aのごとく拡張のない絞扼性小腸閉塞であった.
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