腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 24】

絞扼性小腸閉塞(壊死).Strangulated obstruction with necrosis








図1で肝周囲と脾臓背側に大量の腹水がある(※).図8のRと図9の21で閉塞するclosed loopであることには変わりないが,壁は全く造影されなくなり,図9〜図15ではニボーを形成しない線状の,壁に沿って存在するガスは壁内気腫であり(△),壊死に陥った腸管である.さらに,絞扼された腸管の長さが前日はA→Dと1→13までであったが,24時間後はA→Rと1→21となり2倍の長さに延長してしまった(下記症例参照).腹部所見で腹膜刺激症状を呈したので手術となった.S状結腸間膜が後腹膜へ癒着しバンドを形成,そこで回腸が70cmにわたり絞扼され壊死に陥っていた (図A:切除標本).図16の▲は,前日のCTでは直腸の右側に存在していたが,24時間後は左側へ移動しているので石灰化した遊離体であろう(下記).











参考症例(Plain CT,腹腔内遊離体):99歳男性.腹部大動脈瘤(白矢印)の精査のためCT検査を行ったが,↓は腹腔内遊離体であろう.





腹腔内遊離体(peritoneal loose body,peritoneal pearl body)または腹腔鼠(peritoneal mice)は名前が示すとおり,腹腔内臓器とは連続せず,腹腔内で遊離移動する組織である.発生機序は解明されていないが,主に腹膜垂の脱落,その他として卵巣腫瘍や子宮漿膜下筋腫の脱落したもの,潰瘍穿孔部からの流出物が核となり,異物反応として線維組織が被包し形成されると考えられている.

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】