腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 22】

絞扼性イレウス(壊死).Strangulated obstruction with necrosis 








図1の肝臓周囲と脾臓背側に厚さ2cm程度の大量の腹水(※)は腸閉塞であれば絞扼性イレウスを示唆する。拡張した小腸はgaslessで、図5〜図10で腸間膜間の腹水を認め(▲)、図7と図8、図11〜図13では血管の怒張がある(△)ので絞扼性イレウスの可能性が高い。図16のAと1から頭側へ追跡すると、図10でGと27となり両方ともbeak sign(↑)を呈して閉塞する。図11と図12で虚脱した小腸(SB)があり、図9のa〜図6のjは単純閉塞の腸管と解釈でき、closed loopが証明された。腹水量は多く、腸間膜間に腹水があり、closed loopの腸管壁の造影効果は、単純閉塞の腸管に比べやや減弱しておりviableがどうか微妙な所見である。正確にCT診断され緊急手術が施行されたが、回腸60cmがバンドにより絞扼され出血性壊死に陥っており、切除した(図Aバンド切離後)。









文献考察:イレウスの病態
【イレウス診療のupdate】 イレウスの病態 最近の知見(解説/特集)
  Author:恩田昌彦(日本医科大学 第1外科), 高崎秀明, 田中宣威
  Source:臨床外科(0386-9857)55巻2号 Page145-150(2000.02)
要旨:人間の胃・腸管内には通常100mlのガスが含まれるのみである.主に結腸内に存在し,小腸内にはほとんど認めない.腸管内ガスは,1.嚥下した空気,2.腸管内細菌などによる産生,3.血流からの拡散が考えられるが,2と3に関してはその発生量はごくわずかであり,大部分のガスは嚥下した空気である.人間の腸管内には経口摂取した液,唾液,胃液,胆汁,膵液および腸からの分泌液を含め,24時間で約8〜10Lの液体が流入する.正常ではこれらの液体の大部分は十二指腸および小腸で吸収され,約500mlが結腸で吸収される.腸管に閉塞が生じると閉塞部より口側の拡張腸管ではガスと液体が貯留し,拡張とともに腸管内圧が上昇し,腸粘膜上皮機能が低下して吸収の減少と分泌の増加が認められるようになる.これは腸管内圧の亢進とともに腸管が拡張し,腸粘膜の血流のうっ滞,浮腫および虚血により腸管壁の循環障害をきたし引き起こされるものと考えられている.

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