文献考察:イレウスの病態
【イレウス診療のupdate】 イレウスの病態 最近の知見(解説/特集)
Author:恩田昌彦(日本医科大学 第1外科), 高崎秀明, 田中宣威
Source:臨床外科(0386-9857)55巻2号 Page145-150(2000.02)
要旨:人間の胃・腸管内には通常100mlのガスが含まれるのみである.主に結腸内に存在し,小腸内にはほとんど認めない.腸管内ガスは,1.嚥下した空気,2.腸管内細菌などによる産生,3.血流からの拡散が考えられるが,2と3に関してはその発生量はごくわずかであり,大部分のガスは嚥下した空気である.人間の腸管内には経口摂取した液,唾液,胃液,胆汁,膵液および腸からの分泌液を含め,24時間で約8〜10Lの液体が流入する.正常ではこれらの液体の大部分は十二指腸および小腸で吸収され,約500mlが結腸で吸収される.腸管に閉塞が生じると閉塞部より口側の拡張腸管ではガスと液体が貯留し,拡張とともに腸管内圧が上昇し,腸粘膜上皮機能が低下して吸収の減少と分泌の増加が認められるようになる.これは腸管内圧の亢進とともに腸管が拡張し,腸粘膜の血流のうっ滞,浮腫および虚血により腸管壁の循環障害をきたし引き起こされるものと考えられている.
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