腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 21】

絞扼性イレウス(壊死なし). Strangulated obstruction with no necrosis






図14で骨盤腔内に腹水がある(※).拡張した小腸はgaslessで,図5〜図7と図9で軽度だが腸間膜の浮腫を認め(▲),壁の造影効果がやや減弱しているので絞扼性小腸閉塞を疑い(下記)closed loopを証明してみる.図11の1は図5の7でbeak sign(↑)を示して閉塞し,Aは図2のJで盲端になるが図4の部位で閉塞していると解釈できる(閉塞部位から2,3スライスは腸管の拡張が残っていてもおかしくない).図4〜図6で虚脱した小腸(SB)があり,図4のaが単純閉塞の小腸で,図6のeとなり下行するので,A〜Jと1〜7の拡張した小腸はclosed loopである.Closed loopを示す病変には絞扼性小腸閉塞,捻転と内ヘルニアがあるが,内ヘルニアは頻度的にはまれで,捻転を証明するwhirl signを認めないので絞扼性小腸閉塞と診断する.壁の造影効果はやや乏しいが腹水は少量で,腸間膜の浮腫も軽度だから壊死はないと思われる.癒着性索条物による空腸20cm程の絞扼性小腸閉塞であったが壊死はなく索条物切離のみ行った.腸閉塞を疑えばぜひプリントアウトして拡張した腸管を追跡しながら印を書き込み,closed loopかどうかを診断する訓練をしてほしいものである.






(上腹部痛シリーズ Residentコース ER16の解答より):腸管壊死のCT所見は,1)造影CTにて壁が造影されないまたは造影が弱い,2)単純CTにて壁が高濃度(出血性壊死),3)遊離ガス,4)SMVまたは門脈内ガス,5)壁内気腫(intramural gas),6)壁肥厚,7)大量の腹水,8)隣接する腹膜,腸間膜や後腹膜筋膜の肥厚.1),2)と5)が特異性が高い.(上腹部痛シリーズ Residentコース ER20の解答より):絞扼性(複雑性)小腸閉塞とは腸管の血流障害を伴う腸閉塞であり,放置すれば急速に腸管壊死に陥り重篤な状態となる.絞扼性小腸閉塞のCT所見は,1)腸管壊死の所見,2)閉鎖ループ(closed loop:腸管のloopが隣接する1点で締め付けられている状態)で,近くに虚脱した2つの小腸,または虚脱した1つの小腸と単純閉塞の小腸の始点がある,3)腹水,4)腸間膜の浮腫,5)腸間膜血管の走行異常と静脈の怒脹,6)壁肥厚,7)gasless(腸管内にガスがないかあっても少量)の7所見である.1)と2)が特異性が高いが,3)〜7)のうち3つ以上の所見があれば絞扼性小腸閉塞の可能性はかなり高い.

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