応用問題(Practical Exercises)28(外傷)  解答 【症例 P28ー1】

肝損傷・肝静脈損傷.Liver injury with hepatic vein injury








上段の単純CTでは図2と図3で帯状の高濃度を呈する血腫(白矢印)を認めるだけで肝損傷の有無さえ診断できない.損傷部の血腫と肝実質が同等なdensityを示すからである.外傷例では造影CT(double またはtriple phaseが望ましい)は必須である.








肝損傷を認める.上段の早期相図10と晩期相図14でIVCの造影効果にあまり差がない,さらに早期相でIVCが造影されていることは早期相が本来の動脈相より遅く撮影されている,しかも早期相と晩期相の間が20秒しかない(45秒〜60秒が望ましい)ことが原因で,診断を困難にしている.円内の“contrast blush”は早期相と晩期相で大きな変化を認めず,extravasationか,extravasationを伴う仮性動脈瘤か,extravasationを伴わない(既に止血している)仮性動脈瘤かの判断は困難だが,これだけ多数の仮性動脈瘤が形成されることは想像しがたくextravasationを示していると解釈すべきであろう.下段の図17〜図20の↑はIVC周囲の血腫を意味する“pericaval halo sign”を示しており,IVCまたは肝静脈損傷を示唆する所見である.血管造影が施行された.
















図A〜図Cの▲は大きさと形に変化を示さず仮性動脈瘤で,△は図Aから図Cへと大きくなるのでextravasationであろう.ゼラチンスポンジ細片で塞栓した.図Dは塞栓後の画像で仮性動脈瘤もextravasationも認めない.
その後血圧不安定となったので再度血管造影が行われたがextravasationを認めず,しかし大量輸液と輸血にもかかわらす血圧不安定が続き試験開腹をすることになる.肝静脈損傷が発見され,縫合止血したがショック状態とアシドーシスから抜け出せず不幸な転帰をとった.肝損傷は動脈からの出血を塞栓術で止めても,肝静脈または下大静脈損傷を合併しているために大量出血が続く可能性を忘れてはならない.




  【参照症例】   1. 日本外傷学会臓器損傷分類2008
2. 外傷(Trauma)シリーズ2 【症例 TE 6】

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