下段の図35と図36で膀胱とFoleyカテーテルが示されているので,※は血腫と血液である.早期相の図14〜図35に大量の血腫と血液(※)を認める.晩期相で形を変え拡大するのがextravasationで,形態も大きさも変化しないのは仮性動脈瘤(pseudoaneurysm)であると述べたが,早期相図7〜図15のextravasation1と2はなぜか晩期相で大きくならず,また拡散せずスライスも同じである.しかし,早期相図7〜図24(10スライス)の▲は,晩期相で図11〜図41(16スライス)の△となり,さらに図41でUターンして白矢印となるので20スライスまで広がっている.
MDCTの出現以後症例を多数経験するようになり,筆者は出血の速度を推測できると信じるようになった.撮影時間が短縮されたので5mmスライスCTで20スライス,7mmスライスCTで14スライス,10mmスライスCTで10スライス以上のextravasationは大出血と判断すべきである.Double phase 造影CTなら早期相と晩期相の平均スライス数を算出する.この例では早期相の▲は10スライス,晩期相の△と白矢印は20スライス,両者を平均して15スライスとなり5mmスライスCTの大出血基準値20スライス以下であるが,▲と△以外に複数の出血部位を認めるので20スライス以上となり大出血である.手術で回腸間膜に動脈性に出血している3つの裂創を認め止血したが,出血量は6000mlに達した.Vital signsが安定しているように見えても上記基準を満たせば輸血を準備し,手術を急ぐべきと考える.上記基準は下血例にもあてはまる.
|