応用問題(Practical Exercises)23  解答 【症例 P23-2】

急性膵炎? Acute pancreatitis ?












上段のCTで膵(T:尾部,B:体部,H:頭部)周囲に液貯留(▲)と脂肪組織の濃度上昇(△)を認めるので急性膵炎の可能性は確かに高い.図4と図5で胆石を認める.しかし膵臓の腫大を認めない,densityが頭部はやや低下しているが体部と尾部は脾臓と同程度の造影効果を示している,この2点は急性膵炎に否定的な所見である. CTでは総胆管の拡張と総胆管結石を認めないが,翌日乳頭部切開し総胆管結石除去が施行され,一時腹痛と腹部所見が改善した.
第6病日から腹痛が増強し腹部膨満が出現した.この時点で重症膵炎の基準を満たしたので中心静脈カテーテルを留置し全身管理を強化したが,下段の1週間後のCTで膵周囲の液貯留は著明に増加しているが,膵臓そのものは腫大はないし造影効果も低下していないので急性膵炎ではない可能性がある.
















下段の2週間後のCTでは腹水(※)が出現しているが,膵周囲の液貯留は限局化し減少している.膵臓は相変わらず腫大はなく,造影効果も保たれている.第16病日に大量のタール便があり,内視鏡検査で2個の露出血管を伴う十二指腸潰瘍を認め高張生食水+エタノール注で止血操作が行われ,さらに第22病日にも吐下血があり,十二指腸潰瘍からの出血を認め前回同様の止血が行われた.その後は多臓器不全に陥り死亡することになるが,CT上急性膵炎に否定的な2所見は重要であり,軽度の胆石膵炎から十二指腸潰瘍の後腹膜穿孔を合併した可能性を否定できない.
















  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ13 【症例 EE 65】

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