拡張した小腸は大部分がgaslessで,下段の図28〜図30で腹水(※)を,図21〜図23で腸間膜の濃度上昇(△)を認めるので一見絞扼性小腸閉塞に見える.下段の図26のA,図25のBと図24のCは“小腸内糞便“(食物残渣)と呼ばれ単純性閉塞の閉塞部位を示している場合が多い.図26の対側の1から追跡すると数字順に展開するのでこれらが口側の小腸で,図23〜図16の↑は粘膜下浮腫による壁肥厚を示し閉塞の原因である.拡張した小腸はほとんど印が付いたが,絞扼されclosed loopを形成する小腸は見あたらない.粘膜下浮腫状の壁肥厚による小腸閉塞(または麻痺性イレウス),腹水と腸間膜の濃度上昇を示す疾患としてアニサキス症,SMV血栓症(上段の▲は開存している),血管炎による腸炎(Schonlein-Henoch症候群等),好酸球性胃腸炎,抗凝固剤や外傷による壁内血腫,沖縄や奄美地方では糞線虫症等を鑑別する必要がある.腹痛発症前に「柳の舞」という魚の刺身を食べたことが判明し,アニサキスIgG・A抗体が陽性(1.94,正常値:1.50以下)でアニサキス症であろう(下記症例参照).5日間の保存的治療で症状が消失した.
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