腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 EXPERT COURSE 解答 【症例 GE 8】

非閉塞性腸間膜虚血症・急性胆嚢炎.Non-occlusive mesenteric ischemia with acute cholecystitis








図1〜図4で胆嚢が腫大し,壁肥厚を示し,周囲脂肪組織は炎症所見を呈するので急性胆嚢炎であり,胸痛の原因と思われる.しかし,SMAを追跡すると図8で閉塞しているように見え(↑),図5〜図12では下行結腸(DC)と△の小腸以外は造影効果が減弱している可能性があると解釈し,SMAの血管造影を行った.図Aは前症例同様に,SMAとその分枝が全体的に強い攣縮を起こしている所見である.急性胆嚢炎とNOMIと診断し,経静脈的抗生物質投与と,SMAに留置したカテーテルから塩酸パパベリンを持続注入(生食500+塩酸パパベリン12A,40ml/h)した.4日間で腹痛は消失し,圧痛もなくなった.図2でIVCが平坦化しており,NOMIの原因は脱水の可能性がある.SMAは図8から急に狭小化しており,図Aの血管造影の▲の部位を描出しているのであり,腸管虚血所見と急に狭小化するSMAはNOMIを疑うべき所見ということである.IMA:下腸間膜動脈.







NOMIの具体的治療法
Kaleya RN, Boley SJ. Acute mesenteric ischemia.Crit Care Clin. 1995 Apr;11(2):479-512. Review. PMID: 7788542

血管造影でNOMIの診断がつけばSMAへ塩酸パパベリンの注入を開始する.腹膜刺激症状があれば開腹の適応である.明らかな壊死腸管は切除し,十分な長さの腸管がviableであれば一期的に吻合しsecond look手術は予定しない.明らかな壊死はないが,しかしviabilityが疑問で大量切除を必要とするなら閉腹し,原疾患を治療しつつSMAへの塩酸パパベリン注入を続け,24時間後にsecond look手術をする.開腹を要せず塩酸パパベリン療法で様子見るなら30〜60mg/hで24時間投与し,30分前に生食水に取り替えてから再度血管撮影を行う.臨床的に改善し,血管造影で攣縮や腸管壁の造影が改善しておればカテーテルを抜去する.さもなくば24時間さらに注入を続け,再度血管造影を行う.明らかな改善を認めるのに5日程度かかることもある.
  【参照症例】   1. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 9 【症例 LE 45】

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】