腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 10】

SMA血栓症.SMA thrombosis








図2は削除.図1で肝臓内ガスは辺縁から2cm以内まで到達するので門脈内ガスである.図6〜図13の右側腸管の△は横行結腸(TC)に連続するので上行結腸と盲腸の壁内気腫で,図13〜図17では小腸の壁内気腫を認める(△).従って右側結腸と小腸の壊死または高度の虚血状態を強く疑う.原因は図1〜図13で腹部大動脈(A)が全周性に強い石灰化を,図3では腹腔動脈が,図4〜図8ではSMAが,図11と図12で下腸間膜動脈(IMA)の起始部も石灰化を示しており,不整脈はないから塞栓症ではなくSMA血栓症の可能性が高い.腹水穿刺で血性腹水が得られ手術となった.SMA血栓により右側結腸と小腸2/3が壊死に陥っていた(左上図A).









文献考察:SMA血栓症(thrombosis)
SMA塞栓症(embolism)は,心房細動や弁膜症,心筋梗塞時の心内血栓など心臓由来の塞栓が90%以上であり,まれに大動脈の粥状片の脱落に由来する塞栓がある.血栓症(thrombosis)はSMAの動脈硬化を基盤として形成される血栓による閉塞である.塞栓と血栓の鑑別は次の項目があげられるが,容易でないこともある.1.どちらも急激に発症するが,血栓症では腹部angina(食後腹痛)や体重減少などのSMA狭窄の症状がある.2.他臓器を含め複数の閉塞部位があれば塞栓症,3.塞栓症はSMAの起始部から3〜8cm内に好発し,上部空腸動脈は閉塞を免れ20〜30cmの上部空腸はviableなことが多く,血栓症は起始部から1〜2cm以内で閉塞するのでTreitz靱帯直下の上部空腸も壊死に陥る場合が多い,4.血栓症では全身的な動脈硬化を認める.SMA起始部周辺の動脈硬化が原因だから血行再建を要する.
  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 【症例 EE 79】

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