腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 7】

門脈・上腸間膜静脈血栓症.Portal and SMV thrombosis








肝臓が萎縮し脾腫と腹水があり肝硬変である.図8〜図16の小腸△は3層構造(内側のよく造影される粘膜上皮,その外側の低濃度の粘膜下浮腫または血腫,最外側のよく造影される固有筋層)を呈している.図12と図13で血管の怒張があり(▲),腹水があればただの腸炎ではない.図1の肝門部の門脈(PV)は左右共開存しているが,図2で部分閉塞し(↑)図7の上腸間膜静脈(SMV)から完全閉塞し,血栓症である.肝不全が進行し5日後に死亡した.








文献考察:American Gastrointestinal AssociationのSMV血栓症の治療方針
Brandt LJ, Boley SJ.
AGA technical review on intestinal ischemia. American Gastrointestinal Association.
Castroenterology. 2000 May;118(5):954-68. Review.  PMID: 10784596

SMV血栓症の診断がつけば治療方針は腹膜刺激症状があるかないかで決まる.腹膜刺激症状があれば開腹手術が必要で,なければ1週間程度のheparinizationで様子をみる.その後はワーファリンを3-6ヶ月投与する.SMA,またはSMVから溶解療法で成功した症例報告はあるが普遍的に行われている治療法ではない.手術が決定されても術前と術後にheparinizationは必要である.second look手術は,残した腸管のviabilityに疑問があるときだけ適応がある.
  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 【症例 ER 77】

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