図13〜図17の上行結腸(Ac)と盲腸(Ce)は液状内容物を含むので拡張した小腸は麻痺性イレウスであろう.図10の小腸内糞便(1)から数字順に尾側へ追跡すると図17の8あたりから図21の40まで壁肥厚を示している.肥厚した壁は粘膜下浮腫よりもやや高濃度を呈しているので,壁内血腫を疑うべきである(単純CTがあればさらに高濃度を示したであろう).図18〜図21では腸間膜の著明な濃度上昇(▲)を示している.閉塞部位が図10の1と図20の41だからclosed loopを形成していないので絞扼性閉塞ではない.壁内血腫を伴う他の病態としては外傷,抗凝固剤の副作用,血管炎を伴うSchonlein-Henoch紫斑病などがあるが,上腸間膜静脈血栓症による出血性壊死も考慮すべきである.図1と図2で造影された門脈(白矢印)を認識できるが,図3〜図5で認識できなくなり,図6から造影効果を全く示さないSMV(↑)が出現する.血管造影でSMV血栓の診断は出来なかったが,動脈相(図A)と静脈相(図B)で血流障害を示唆する無血管野(avascular area:▲と△)を認め,SMAから血栓溶解剤を持続注入したが効果なく.3日後に手術が行われた.SMV血栓と40cm長の回腸出血性壊死(図C:↑)が確認され切除された.原因としてプロテインS欠乏症が判明した.
|