腸閉塞・イレウス特集(obstruction+ileus)11  RESIDENT COURSE 解答 【症例 ILR 55】

絞扼性小腸閉塞(2日後でも壊死なし).Strangulated obstruction of small bowel with no necrosis








右側結腸が描出されている画像は省略したが,図2〜図4の回腸(△)が虚脱しており,拡張した小腸はgaslessで,図1の肝周囲には認めないが図12と図13で少量の腹水(※)を,図10〜図12で腸間膜の濃度上昇(▲)を示しているので絞扼性小腸閉塞の可能性が高い.図15から追跡すると1は図11の26で閉塞し,Aは図10のFで閉塞するのでclosed loopを形成している.図9と図10で虚脱した小腸(SB)があり,図10の丸数字1から単純性閉塞の小腸が拡張し始め,数字順に上行する.Closed loopの壁は造影効果を認め壊死はないと診断する.









腹部所見で絞扼性閉塞を示唆する所見を認めず,CTでも壊死所見を認めず腹水も少量だから,単純性小腸閉塞としてNGチューブを挿入して経過観察された.下段は2日後のCT.熱はなく,腹部所見の増悪はない.








Closed loopを形成する絞扼性小腸閉塞は数時間で壊死に陥る場合が多く即手術の適応であるが,2日経過したこの症例ではどうか? 肝周囲(図18:※)と骨盤腔内(図28〜図32:※)で腹水が増加し,図29〜図31で腸間膜の濃度上昇(2日前は不均一な境界不鮮明な濃度上昇だから浮腫)が腸間膜間の腹水(↑:均一で境界鮮明なwater density)に変化しているのは不吉な所見である.図34から追跡すると図27のHと図28の41で閉塞するので2日前と同様にclosed loopを形成している.図26の丸数字1から単純性閉塞が始まり丸数字順に展開する.造影効果を認めるので壊死はないが,closed loopの小腸の長さが2倍近く(閉塞部位が26→2日後41)に延長していることは,早期診断がいかに重要であるかを示している. 手術で左卵巣と骨盤漏斗靱帯が癒着しヘルニア門を形成し,そこへ80cm長の回腸が入り込み絞扼されclosed loopを形成していたがviableであった.2日経過しているにもかかわらず壊死はなく軽度の虚血状態を呈したまれな症例である.









  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ25 【症例 ER 121】

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