下段の図13〜図15で盲腸(Ce)が虚脱しているので拡張した小腸は機械的閉塞である.大部分がgaslessで,図1と図19〜図21で腹水(※)を,図2〜図4では腸間膜間液貯留(▲)を認めるので絞扼性小腸閉塞の可能性がある.図21のAと1から追跡すると,1は図2の50となり上行し.Aは図7のWで閉塞する.図5〜図7の“小腸内糞便(small bowel feces:↑)“と隣接する虚脱した小腸(SB)は閉塞部位を示している.図9のabはaとbに分かれ上行する.従って,図7のWで閉塞する単純性閉塞との診断となる.図5〜図7の虚脱した小腸(SB)に腫瘍性病変を示唆する所見はなく,腹部手術の既往がないことを考慮すると食餌性小腸閉塞の可能性を考慮する.Gasless,腹水と腸間膜の濃度上昇または腸間膜間液貯留の3所見があれば絞扼性の可能性が高いと述べてきたが,例外のない法則はないわけで,この症例は単純性閉塞例である.単純性で腹水と腸間膜の濃度上昇が発生する機序は,拡張した小腸が腸間膜を過度に伸展させ,または壊死に陥らない程度の捻転を起こし,静脈血の還流不全となり出現するものと筆者は推測する.イレウスチューブを挿入したが腹痛は続き,2日後に手術となった.盲腸から約50cmの部位で閉塞を認め,5cm大の腫瘤(図A:△)を触れた.可動性があり,食餌性と思われたので盲腸へ移動(milking)させていると砕けてしまった.
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