絞扼性小腸閉塞の病態生理:(Bockus Gastroenterology 5th ed. Edited by WS Haubrich, F Schaffner, JE Berk. Philadelphia, WB Saunders, 1995)から.
開腹手術後または腹膜炎治癒後腹腔内には多数の索状物(band;上図)が形成される.大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニア嵌頓例から理解できるように小指の先ほどの隙間でもあれば,そこへ虚脱した小腸が入り込み嵌頓を起こす(図A).索状物による締め付けが始まると以下の現象が起こる.
1)小腸は24時間で7,8Lの腸液を分泌し,10L(小腸液+胆汁,膵液,胃液,飲み込んだ唾液,の95%)を吸収するが,虚血状態になると吸収機能が停止し,分泌は継続または増加する→腸液で拡張し,gasless(CT画像の断面の半分以下とした方が絞扼性の診断に有用)の閉鎖ループ(closed loop:腸管のloopが隣接する2点で締め付けられている状態で,近くに虚脱した2つの小腸,または虚脱した1つの小腸と単純閉塞の小腸の始点がある:図B)を形成する→虚脱した小腸を引っ張り込んで.closed loopが延長する.
2)血圧の差により閉塞部位で静脈だけ閉塞し動脈は開存している時間があることと,腸管内圧上昇による毛細血管への圧迫から,血流の停滞を起こすため腸間膜の浮腫が生じ,そこから水分が漏出し腹水が生じる.
3)腸液が停滞すると細菌が急激に増殖する(単純性閉塞でも内容物はかなり汚染されていることに注意)ので,ガス産性菌が存在するとある程度のガスが発生する.
単純性閉塞では飲み込んだ空気によりgaslessではないことが多く,さらに静脈の循環障害は起こりにくいので,腸間膜の濃度上昇と腹水は発生しない場合が多い.
従って,gaslessで腸間膜の濃度上昇と腹水があれば絞扼性小腸閉塞を疑うべきである.
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