腸閉塞・イレウス特集(obstruction+ileus)1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ILR 2】

左大腿ヘルニア嵌頓.Incarcerated left femoral hernia









図5〜図7で盲腸(Ce)に拡張や,液状内容物を認めず,小腸だけの拡張だから機械的小腸閉塞である.外ヘルニア嵌頓を検索すると,図15と図16で鼠径部に脱出した腸管(↑)を発見する.ヘルニア嚢(sac)は恥骨結合を超えず限局しており,図14と図15で大腿静脈の圧排像(△)を認め,大腿ヘルニアである.通常の横断像(axial) (図5〜図18)では鼠径靱帯は認識できない.ヘルニア嵌頓部が閉塞部位であることを証明するために図14のAと1から追跡すると,図のように展開し,図12のFの▲が閉塞部位である.図19〜図21の冠状断(coronal)再構築画像では↑が腹腔外へ脱出した小腸で,図19で鼠径靱帯(△)を認識でき,それより尾側(下方)で脱出していることで,大腿ヘルニアとの診断が容易になる.手術で大腿ヘルニアに嵌頓した小腸(図A:▲間)には浮腫と発赤を認めたが,嵌頓解除後色調が次第に回復したので切除は不要であった.腹痛症例では鼠径部を,男性では陰嚢を診察することを怠ってはならない.十分な診察が行われず,すぐ画像診断に頼る症例が確実に増加していることに警告を発する.






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参考症例(右大腿ヘルニア嵌頓):79歳女性.数時間前に急に心窩部痛と嘔吐が出現した.熱はなく,腹部はsoft and flatで圧痛もないが,右鼠径部に還納出来ないヘルニア嵌頓を認めた.




図1で盲腸(Ce)と回腸末端(Ti)が虚脱しており,拡張した小腸は機械的閉塞である.図8〜図11でヘルニア嵌頓(↑)を認め,図6の1から小腸が拡張し始め上行する.嵌頓した小腸は恥骨結合(白矢印)を超えず外側に限局しており,図8〜図10では大腿静脈(▲)が対側(△)に比べ狭小化しており大腿ヘルニアと診断できる.手術で同所見が確認された.








  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ4 【症例 RR 18】

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