図5〜図7で盲腸(Ce)に拡張や,液状内容物を認めず,小腸だけの拡張だから機械的小腸閉塞である.外ヘルニア嵌頓を検索すると,図15と図16で鼠径部に脱出した腸管(↑)を発見する.ヘルニア嚢(sac)は恥骨結合を超えず限局しており,図14と図15で大腿静脈の圧排像(△)を認め,大腿ヘルニアである.通常の横断像(axial) (図5〜図18)では鼠径靱帯は認識できない.ヘルニア嵌頓部が閉塞部位であることを証明するために図14のAと1から追跡すると,図のように展開し,図12のFの▲が閉塞部位である.図19〜図21の冠状断(coronal)再構築画像では↑が腹腔外へ脱出した小腸で,図19で鼠径靱帯(△)を認識でき,それより尾側(下方)で脱出していることで,大腿ヘルニアとの診断が容易になる.手術で大腿ヘルニアに嵌頓した小腸(図A:▲間)には浮腫と発赤を認めたが,嵌頓解除後色調が次第に回復したので切除は不要であった.腹痛症例では鼠径部を,男性では陰嚢を診察することを怠ってはならない.十分な診察が行われず,すぐ画像診断に頼る症例が確実に増加していることに警告を発する.
|