外傷(Trauma)シリーズ19 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 95】

膵頭部十二指腸損傷(IIIb + D).pancreaticoduodenal injury(V)






図4〜図6は省略.図1〜図3で腹水(※)と遊離ガス(白矢印)を認め,消化管穿孔の可能性が極めて高い.膵体部(B)と尾部(T)には損傷はなさそうだが,図9〜図11で頭部が腫大(▲)し,不均一な低濃度を呈している.背側後腹膜にwater densityの液貯留(△)もあり,膵頭部十二指腸合併損傷を強く疑う.手術で膵頭部完全断裂と十二指腸穿孔を認め,膵頭十二指腸切除が行われた.今まで供覧した膵損傷症例は比較的断裂部が明瞭な例であったが,断裂部の血腫,断裂部周囲膵組織の浮腫,挫創に伴う血管のれん縮などで修復され,断裂の診断が困難な例も少なくない.3mmまたは2mmスライスの画像,晩期相のCTで断裂部がより明白になる.それでも膵損傷の診断が不確実ならERPが“gold standard”である.






参考症例(膵頭部断裂):酒気帯び運転で事故を起こし,腹痛を訴えて来院した30歳男性.心窩部に圧痛と筋性防御を認めた.



この症例でも膵体部(B)と頭部(H)の造影効果が弱く,図4〜図6の↑が断裂部かなと疑うが,手術の適応とするには明確さに欠ける所見といわざるをえない.手術で膵頭部完全断裂を認め,体尾部切除が施行された.








 【 ←前の問題 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】