外傷(Trauma)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 95】

膵損傷(II:体部部分断裂).Pancreatic injury(II)



膵損傷例であるが,図2〜図4で断裂(↑)を認め,図5〜図7で連続性(▲)を示し,50%の部分断裂である. B:膵体部,T:膵尾部,H:膵頭部. ERP(Endoscopic Retrograde Pancreatography:図A)を施行したが,主膵管は膵尾部まで描出され損傷を認めない.△の造影剤が胃内か膵管から漏出したものかの判断が困難であり,ERP後のCT検査を行った.






下段の図10〜図13で▲は十二指腸(Du)内の造影剤だが,▲以外は膵管から漏出した造影剤であり,部分断裂による膵管分枝損傷を意味する.




保存的に経過観察されたが,3日後のCTで断裂部(↑)周囲の膵液貯留は僅かであり,以後も仮性嚢胞を形成することなく順調に経過した.




参考症例(膵頭部挫傷 I):41歳女性.乗用車で停車中の車に追突し,ハンドルで上腹部を打撲した.血圧:145/83mmHg,脈拍:87/分.上腹部に圧痛を認めた.








図7〜図12で膵頭部(H)と十二指腸(Du)周囲に血腫または液貯留を認め,膵頭部は不均一にやや低濃度を示し,頭部損傷と十二指腸損傷を疑う.T:膵尾部,B:膵体部.図Aと図BのERPで主膵管(↑)は尾部まで描出されており,損傷はない.図Bの▲は造影剤の漏出の可能性があると診断されたが,上記症例のようにERP後のCTを撮れば確定診断が可能である.胃十二指腸造影で血腫による十二指腸C-loopの開大(白矢印)を認めるが,十二指腸穿孔を示唆する所見はない.腹痛と圧痛が増強したので翌日手術となったが,膵頭部挫傷(contusion)と周囲血腫を認めるだけで,十二指腸損傷も否定された.膵頭部周囲のドレナージだけで順調に経過した.







  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ15 【症例 TR 71】

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