外傷(Trauma)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 94】

肝損傷(Ib).liver injury(II)








図9〜図16は省略.肝周囲と被膜下に腹水を認めないので右葉の肝中心性破裂(Ib)である.図2と図3の△,図7と図8の▲は正常血管との連続性を確認できないのでextravasationまたは仮性動脈瘤の可能性が高いが,確定するにはdouble phase 造影CTが必要である.Extravasationであれば,図1〜図3,図7と図8の↑部分は僅かな肝組織で肝外への出血を防いでいる所見だから,肝外へまたは被膜下出血へ進行し大量出血を起こす可能性があると判断すべきである.LHV:左肝静脈,MHV:中肝静脈,RHV:右肝静脈,LPV:左門脈,PV:門脈,RAPV:右門脈前枝,RPPV:右門脈後枝.
下段の翌日のCTで肝周囲の液貯留は,図18と図19で凸レンズ状に肝右葉を圧排(白矢印)しているので被膜下血腫である.中心性破裂部の血腫量が増大し,被膜下に相当量の血腫を認めることは,上記△と▲の両者,またはどちらかはextravasationであることを意味する.図21〜図23の△もextravasationかどうかの診断にはdouble phase 造影CTが不可欠である.下記参照症例の参考症例では保存的治療で成功したが,損傷が被膜に近く,extravasationを認めればTAEの適応であろう.最下段の血管造影で異常所見を認めなかったが,Hbは12.1g/dlから6.8g/dlに低下し,3単位の輸血を要した.











参考症例(肝損傷 Ib):50歳男性.2時間前に乗用車で走行中ハンドル操作を誤って電柱に激突した.血圧:92/52mmHg,脈拍:69/分.腹痛を訴えないが心窩部に圧痛がある.








上段の来院時のsingle phase 造影CTで肝中心性破裂(Ib)を認め,周囲に血腫や腹水を認めない.△は正常血管より大きいのでextravasationを示している可能性が高い.図1の↑の部分は薄い僅かな肝組織だから,前例同様,出血が続けば肝外への大量出血に進行する可能性を考慮すべきである.入院後に血圧:73/51mmHg,脈拍:125/分となり,急速輸液を行いながらdouble phase 造影CT検査を施行した(下段).Extravasationを認めないが,中心性破裂部位血腫の増大,肝周囲と脾臓周囲に大量の血腫を認め,上記△はextravasationであったことが証明された.手術となり,肝右葉S8に10cmの裂創(図A:▲)を認めたが,静脈性のoozingを認めるだけであり,創縫合が行われた.出血量は3000mlを超え,輸血4単位を要した.












  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ2 【症例 TR 9】

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