外傷(Trauma)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 92】

膵損傷(IIIa).Pancreatic injury(III)








図9〜図12は省略した.図5で膵体部(B)がやや腫大しており,図5〜図8で前腎傍腔に液貯留(△)を認めるのでアルコール性急性膵炎と診断された.しかし,図3の膵体尾部(BとT),図5〜図7の膵頭部(H)は腫大しておらず,良好な造影効果を示している,図3〜図5の↑は膵断裂部を示し,▲は血腫である可能性を考慮し,外傷を疑うべきである.下段の2日後の5mmスライスCTで明白となる.図13〜図16で肝周囲に腹水(※)が出現し,前腎傍腔の液貯留(△)が増量した.図15〜図19の↑は明らかな外傷性膵損傷であり,どの画像でも連続性を認めないので完全断裂である.しかし,急性膵炎としての治療が続行された.








下段の2週間後のCTで断裂部周囲の液貯留(膵液+血液:△)が限局化しつつある.4週間以上経過して線維性被膜が形成される時期以前に仮性嚢胞(pseudocyst)と呼ぶのは正しくない.








2ヶ月後に来院したときには一個の仮性嚢胞(※)が完成され,増大し食事摂取不可能となったので,経皮的ドレナージ(図31と図32:白矢印)を施行した.後日の手術で膵完全断裂が確認され,膵体尾部切除が行われた.外傷例の中には外傷の事実を知られたくない場合があり,また泥酔で受傷の記憶自体がないこともあるので,常に外傷の可能性を念頭に置いて診療することが大事である.




  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ13 【症例 ER 65】

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