外傷(Trauma)シリーズ18 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 87】

左腎嚢胞内出血・脾臓損傷(IIIc).Left renal cyst hemorrhage・splenic injury(III)








上段で脾臓損傷を認めるが,extravasationを示す所見はなく,出血量も大量ではなく,図12でIVCは大動脈より小さくなっているが虚脱ではないので軽度のhypovolemiaと解釈する.図8〜図15の左腎の↑は嚢胞であるが,内容液がやや高濃度を呈し,嚢胞内出血であろう.図13と図14の△はextravasationを伴わない仮性動脈瘤か単なるextravasationかの診断にはdouble phase 造影CTが必要だが,辺縁鮮明な円形を示しているので仮性動脈瘤の可能性が高い.









脾臓の血管造影が施行されたがextravasationを認めないため塞栓術は行わず,カテを留置し(図2 4 b〜図2 6 b:▲)vasopressinを注入した.下段の翌日のCTで脾臓周囲の血腫は僅かに増量しているだけで順調な経過を示している.左腎嚢胞も大きさの増大を認めず,仮性動脈瘤と思われた所見も消失(血栓化)した.最下段の2ヶ月後のCTでは脾臓損傷は修復され,腎嚢胞もやや縮小を示している.Hbは11.9から6.8g/dlまで低下したが輸血なしで退院時には改善した.












参考症例(多発性嚢胞腎内出血):34歳男性.運転中に壁に衝突し,血尿と右側腹部痛を訴えて来院した.
△は多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease)の嚢胞内血腫を示し,図8の▲は膀胱内血腫である.腎機能は正常.安静だけで血尿は消失した.








  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ9 【症例 TE 43】

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