外傷(Trauma)シリーズ16 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 79】

肝刺創(活動性出血なし).Stab wound of liver with no active bleeding








造影(Enhanced)CTの図5〜図8と図13〜図16は省略した.図1で▲の,筋肉よりdensityの高い軟部組織は血腫であるから,周囲の△は血液であり,腹腔内出血を起こしている.図1〜図4で肝周囲と脾臓周囲に,下段のMorison窩にも液貯留(※)を,また図10〜図17で血腫(白矢印)を認めるが,その量はそれぞれ200,100,100と200で,合計600mlである.図4と図9で肝外側区域に刺創路内血腫(↑)を認め,そこが出血源と思われるが,extravasationはなく既に自然止血しているものと解釈する.4時間も経っていて1000ml以下の出血量と,extravasationを認めないので手術の適応はない.しかし,手術が行われ,既に止血した肝刺創(図B:↑)が確認され(negative laparotomy),出血量は700mlであった.




参考症例(腹壁出血):21歳男性.2時間前に刃渡り7cm長のナイフで自ら上腹部を刺した(最下段図A).Vital signsは安定,腹部はsoft and flatで創周辺以外では圧痛もない.






図2〜図6の↑が刺創路の血腫だが,腹腔内にはextravasationを認めず,図4〜図7で少量の血腫(△)を示しているだけである.▲は遊離ガスではなく,図11で後腹膜に連続するので脂肪組織である.少量の出血で,腹膜刺激症状もないので手術の適応はなく保存的に治療され,順調に経過した.






  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ7 【症例 TE 31】

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