外傷(Trauma)シリーズ15 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 75】

膵損傷 IIIb(80%断裂).Pancreatic injury grade IV





図2と図3で肝,脾臓周囲と胃背側に,図10と図11でMorison窩に腹水(※)があるが,胃液や胆汁との濃度差を認めず血性とは断定できない.大動脈と同濃度の点状,円形または線状の構造物はすべて正常血管であり,extravasationを認めない.図4〜図6で後腹膜に液貯留(▲)を認めるので膵外傷がないか検索することが大事である.図6〜図9の↑は膵断裂を示しており,図10ではわずかな部分で連続性(白矢印)が保たれているので,50%以上の部分断裂である.図8で断裂部(↑)はSMV右縁より右側に位置するので日本外傷学会分類(下記)では膵損傷 IIIbとなる.図6のIVCは扁平ではないが大動脈より小さくかなり虚脱しているので中等度のhypovolemiaである.Du:十二指腸,T:膵尾部,B:膵体部,H:膵頭部.正確に診断されERPなしで手術となった.腹水は淡血性で,膵断裂部からの出血と膵液が混合したものと思われた.膵頭部で80%の膵断裂を認め,膵末梢部の膵管にチューブを挿入し外瘻化し,後日膵管空腸吻合術を施行した.5mmスライスCTだから部分断裂でも正確な診断が可能である.






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  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ4 【症例 TR 19】
2. 日本外傷学会膵損傷分類2008

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