大量の腹水があるが,図2〜図6で脾損傷(↑)とextravasation(△),図11と図12で周囲血腫を伴う左腎損傷(▲)を認め,図9でIVCが虚脱しており,外傷による出血である.図2と図3の白矢印は左胃動脈であろう.脾臓は肝臓と比較して造影効果が明らかに弱く(血流低下),脾門部での主動脈からの出血を示唆する.出血量は,図3の肝周囲で150,図8の脾臓外側で300,図11のMorison窩に200,図19の右傍結腸溝に200,左結腸溝に150,小腸間に150,図20の骨盤腔に350で,合計1500ml.通常はこれらの7部位で計測するのだが,胃と肝臓間にも相当量あるので,図8で200,図11の腎周囲の200を加え,合計1900mlとなる.緊急手術となり,2300mlの出血量,粉砕型脾損傷と脾門部血管損傷(IV)を認め,脾臓摘出術を施行した.左腎周囲の血腫は術中に腫大を認めないため放置した.輸血10単位を要したが,術後は合併症なく順調に経過した.
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