来院時血圧は70台だが脈拍は64/分と頻脈はなく,腎静脈が合流した部位より頭側のIVC(図12,図16)が虚脱していないことから,血圧低下の原因は循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)ではなく,神経原性ショック(neurogenic shock)の要素が強いと評価すべきである.脾臓損傷がありその周囲に腹水がある.Early(早期相)とdelayed(晩期相)のdouble phase造影CTだからextravasationとpseudoaneurysmの鑑別が可能である.extravasation の造影剤はdelayed phaseで多くの場合周囲の血液により希釈され淡くなり,さらに拡散して大きくなり形が変化するが,pseudoaneurysmは大きさと形が変化しない.早期相の図3と図4の↑は晩期相の図7と図8の白矢印と大きさと形が類似しており,pseudoaneurysmの可能性が高い.図6〜図18で早期相の△は晩期相(▲)で拡散し大きくなり形が変化しているのでextravasationである.血管造影でpseudoaneurysm(図Aと図B:白矢印)とextravasation(図Aと図B:↑)を認め,塞栓術を行い,塞栓術後CT(図C)でextravasationがないことを確認した.Hbは7.5g/dlまで低下したが輸血なしに保存的治療に成功した.
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