外傷(Trauma)シリーズ1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 2】

脾損傷 IIIc.AAST spleen injury scale grade III






図1〜図3で肝周囲と左横隔膜下に腹水(※)があり,図6〜図11で脾損傷(↑)を認める.図4〜図9の△は血管の存在しない脾臓外に位置するのでextravasationであり,活動性の出血を意味するので即刻塞栓術目的の血管造影,血管造影が出来ないのであれば手術の適応である.図8と図9の▲は正常の血管である.血管造影(図A〜図C)を施行したがextravasationや仮性動脈瘤(pseudoaneurysm)を認めず,すでに自然止血したものと思われた.塞栓術を行わず,Hbは15.1から10.4g/dlまで低下した(顔面骨と橈骨骨折もあり).









参考症例(脾損傷IIId):49歳男性.交通事故で左胸部を打撲し胸痛を訴えて来院した.左第5〜第9肋骨骨折と胸腔内出血を認めた.血圧:102/70mmHg,脈拍:92/分.心窩部に圧痛と筋性防御がある.



図1〜図3で肝周囲と脾臓周囲に腹水(※)があり,図1〜図4で脾損傷(↑)を認める.図2〜図4の▲は脾実質より高濃度を示し,extravasationか仮性動脈瘤(pseudoaneurysm)の可能性が高いが,正確に診断するにはdouble phase造影CTが必要である.図4〜図9の△はextravasationである.手術で活動性の出血を伴う脾損傷を認め,脾臓摘出が行われた.








拡大画像を見る
文献考察:2379例の鈍的腹部外傷例で受傷臓器は肝臓:39%,脾臓:38%,腎臓:11%,小腸・十二指腸:5%,大腸・直腸:4%であった(表)
Fabian TC,Bee TK.Liver and Biliary Tract Trauma. In:Trauma.5th Ed, McGraw Hill,New York.,page:639,2004.

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】