外傷(Trauma)シリーズ1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 3】

脾損傷(IV型).AAST spleen injury scale grade IV(?)












図5〜図8は省略.肝臓と脾臓に明白な損傷を認めないが,図1〜図4で相当量の腹水(※)があり,図4でIVCが虚脱している.図36で腹水のdensityが計測されており,1:39.2HUは血液,2:59.2HUは血腫(凝血塊)であることを強く示唆する(下記文献).早期相(Early)の△と晩期相(Delayed)の▲はその大きさと部位から,また周囲に血腫を認めるのでextravasationと解釈するが,図10と図14の脾臓から始まっており,脾臓からの出血であろう.7.5mmスライスの1スライスおきでこれだけのスライス数(図14〜図39)でextravasationを認めることはかなり大量の高速出血を意味する.CT撮影後まもなく血圧が低下し始め手術となった.図Aのごとく脾臓そのものに損傷はなかったが,脾動脈の下極枝が長軸に裂けており活動性の出血を認めクリップで止血した.
























文献考察:腹腔内液貯留のdensity
1)Gore RM, Gore MD. Ascites and Peritoneal Fluid Collections.In:Textbook of Gastrointestinal Radiology.2nd Ed,W.B.Saunders,Philadelphia.1969-1979, 2000.
腹腔内液貯留のCT値.単純腹水:0〜30HU,血液:30HU以上,chylous ascites:0HU,Biloma(血液を含まない,感染していない):20HU以下.

2)Becker CD, Mentha G, Terrier F.
Blunt abdominal trauma in adults: role of CT in the diagnosis and management of visceral injuries. Part 1: liver and spleen.
Eur Radiol. 1998;8(4):553-62. Review. PMID: 9569321
血液:30〜45HU,凝血塊:50〜60HU,あるいはそれ以上.

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