その他(Miscellaneous)シリーズ20 EXPERT COURSE 解答 【症例 ME 100】

肝動脈瘤破裂による胆道出血.Hemobilia(biliary tract hemorrhage) with ruptured hepatic aneurysm












上段の単純CTで肝内ガスは,一部肝辺縁から2cm以内に存在する(図1:△)が,図3と図4で主に肝門部に集中している,総胆管小腸吻合術が行われた,図3〜図11の総胆管内(↑)にもガスを認めることから門脈内ガスではなく胆管内ガス(pneumobilia)である.もっと重要な所見は,総胆管(↑,図9より尾側はおそらく小腸)が1cm以上に拡張し,内容物が高濃度を示し,ガスとの境界はニボーを形成していない(水平線でない)ので血腫を強く示唆する.図3で外側区域の胆管拡張(白矢印)と,同図の△は周囲肝組織と比較してやや高濃度を示し,これも血腫と解釈すれば,肝左葉での胆道出血である.下段の造影CT早期相で肝左葉に動脈瘤(図17と図18:▲)が発見され,肝内動脈瘤の胆道内破裂との診断が確定した.白矢印は胆管拡張を,↑はガスを含む,血腫で拡張した総胆管を示している.血管造影で同所見が確認され(図A〜図C:▲が動脈瘤),コイルで塞栓した(図D:△).












消化管出血例のmanagementに関して最後に一言.吐血例では内視鏡検査がfirst choiceである.90%以上の症例で出血部位または出血病変が発見され,即時に止血操作が可能である.内視鏡検査で出血源不明例ではdouble phase造影CTが有用で,多くの情報が得られる.他方,下血例では緊急大腸ファイバー検査で出血部位が発見され止血操作が行われた症例は,徳洲会グループで50%前後と感じており,出血部位を同定するため,大腸ファイバー検査の前にdouble phase造影CTを撮るべきと提案する.止血操作が行われた症例が多くない理由は,1)大腸ファイバー検査は高度の技術を要する,2)大量の下血例では結腸内に血腫が充満しているため出血部位まで到達できない,3)自然止血しており,複数の病変を認めることが多いからであろう.(数例しかないが)手術が唯一の止血法となった場合,出血部位が術前に同定されていないと術中に切除部位を決定することは不可能に近く,成功例は記憶にない.double phase造影CTにより大多数例で出血部位が同定または推測可能であることを学んでほしいとの願いから,このシリーズでは吐下血例を50例以上掲載した.
  【参照症例】   1. その他(Miscellaneous)シリーズ13 【症例 ME 65】

 【 ←前の問題 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】