その他(Miscellaneous)シリーズ20 RESIDENT COURSE 解答 【症例 MR 99】

大量小腸壊死(NOMI:非閉塞性腸間膜虚血症).Massive small bowel necrosis with NOMI(non-occlusive mesenteric ischemia)








肝内の細かいガス(△)は門脈内ガスである.胆道内ガス(pneumobilia)は胆汁の流れに逆らって上昇してきたガスだから肝門部に集中し,そこから末梢には到達しにくい.門脈内ガスは門脈の流れに乗って肝表面から2cm以内の末梢まで広がり肝門部には残らない.門脈内ガスの大部分(60%前後)は腸管壊死によるものだから,次に門脈領域腸管の壁内気腫や壁の造影効果不良所見を検索することが大事である.図4〜図18のニボーを形成しない線状のガス(↑)は壁内気腫であり,その壁は図17〜図19のviableな腸管(▲)の壁と比較して壁の造影効果を認めないので壊死に陥った腸管の可能性が高く,小腸の大量壊死を強く疑う.図4でIVCが虚脱しており,強い脱水によるNOMI( non-occlusive mesenteric ischemia :非閉塞性腸間膜虚血症)か,少なくとも強い脱水が壊死を助長したことが考えられる.手術を拒否され,2日後に死亡した.











参考症例(Plain CT,NOMI・大量小腸壊死):老年期精神病で他院に入院中の75歳女性.2日前に風邪症状が出現し,内服薬で様子をみていた.前日から腹部膨満し始め次第に増強したため来院した.血圧:120/56mmHg,脈拍:148/分(不整),体温:35.7℃,腹部は膨満・緊満しているが圧痛はない.CT撮影中に呼吸停止し,挿管後入院となる.








図1と図2の肝内ガス(△)は門脈内か? 肝表面から2cm以内まで達しているが,図2と図3で肝門部に相当量存在し(▲),門脈にしては全体的に太い,また図4〜図8の▲はガスを含む総胆管の可能性が高く,肝内ガスは成因は不明だが胆管内ガスであろう.ガスの量が多いときと,肝内胆管拡張がある場合には胆管内ガスでも肝表面から2cm以内の末梢まで達することがある.胃と十二指腸(Du)が拡張し,図9で上行結腸(A)と下行結腸(D)が虚脱しているので,拡張した腸管は小腸である.図6〜図16で十二指腸(Du)と小腸に壁内気腫(↑)を認め,虚血状態か壊死を示唆する.図6でIVCが扁平化しており,重度の循環血液量不足状態である.
手術はしない方針となり翌日死亡した.病理解剖:機械的閉塞の所見はなく,回腸末端40cm以外の全小腸が暗赤色で粘膜壊死に陥っていた.SMAに塞栓を認めなかった.強い脱水によるNOMIの可能性が高い.








  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ4 【症例 ER 17】
2. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)16 【症例 GR 78〜80】

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