その他(Miscellaneous)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 MR 92】

急性壊死性膵炎.Acute necrotizing pancreatitis




膵臓は門脈左側縁の部位を頚部,頚部から脾臓側先端までを2等分して体部と尾部,頚部から右側を頭部(頸部と鈎状突起を含む),SMA後部を鉤状突起と命名されている.急性膵炎のCT所見は,1)腫大:膵頭部で椎体の横径以上,体尾部で椎体の横径の2/3以上を腫大とする.SMA周辺はSMAから放線状に計測するが,体尾部の計測の際脾静脈を,頭部は十二指腸を含めないよう気を付ける.2)膵周囲の炎症所見(液貯留,浮腫),3)膵実質の濃度の不均一化の3点である.急性膵炎例で膵腫大が認められるのは半数以下で,急性膵炎のCT診断には2の膵周囲の炎症所見が中心となる.
この例では膵腫大はないが,膵体部(B)と尾部(T)は脾臓と比べ低濃度を示し,不均一で,両側後腹膜腔に液貯留(▲)を認め,急性膵炎である.図4〜図15で膵頭部は造影効果を失い(↑:血流がない),図9〜図12の単純CTで同部位が高濃度(白矢印)を呈している.単純CTで筋肉と同等にまたはそれ以上に高濃度になっていることは血腫を意味し,すなわち出血を伴う膵炎である.壊死性膵炎全例が出血を伴うわけではないが,出血性膵炎は壊死性膵炎を意味する.動注療法に反応しないため手術となったが,同所見が確認された.膵周囲ドレナージを行ったが多発臓器不全で4日後に死亡した.












参考症例(急性壊死性膵炎):アルコール依存症の43歳男性.6時間前からの腰背部痛と上腹部痛のため来院した.体温:37.1℃,心窩部に圧痛があるが軟.
図1〜図4で膵体尾部は腫大し,周囲液貯留(▲)を認め,↑の低濃度部分は壊死を示唆し,急性壊死性膵炎の可能性が高い.重症と診断され動注療法が行われた.第3病日のCTで壊死部(白矢印)が明白になり拡大している.図5と図6の△は動注療法による脾梗塞.状態が改善し始めた2週間後の図8と図9で壊死部(↑)は大部分が吸収され,膵実質が萎縮しつつある所見を示している.図1〜図4で肝臓が低濃度を示しているのはアルコール性脂肪肝であるが,2週間の禁酒でほぼ正常に回復している.









  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)7 【症例 GE 31,32】
2. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ11 【症例 ER 52】

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