文献考察:処女膜閉鎖症imperforate hymen 右下腹部痛を主訴とした処女膜閉鎖症の1例
Author:濱田徹(小山市立小山市民病院 外科), 井寺奈美, 塚原宗俊, 清水敦, 金田文輝, 栗原克己
Source:臨床外科(0386-9857)61巻4号 Page523-526(2006.04)
Abstract:11歳女児.下腹部痛が出現し,腹部超音波検査にて右下腹部に内腔が鏡面像を示している嚢胞状腫瘤を認め,卵巣嚢腫茎捻転や急性虫垂炎を疑って緊急手術を施行した.腹腔内に約100mlの血性腹水を認め,腹腔内を精査したところ,右卵管は小指大程度に太くなり右卵管釆より出血を認めた.又,臍上部まで腫大した子宮から下方に向かって連続するように嚢胞性腫瘤を触知した.以上から,処女膜閉鎖症や腟閉鎖症などの鎖陰により貯留した血腫の逆流による腹腔内出血と診断した.術後1日目に会陰部視診を行い,貯留した経血が青く透見できる閉鎖した処女膜を認めた.処女膜閉鎖症と確定診断し,全身麻酔下で処女膜十字切開術を施行し,暗赤色調の貯留血腫の排出を認めた.術後5日目の経直腸超音波検査で腟内の貯留血はほぼ排出され,腟の大きさも正常となっていた.又,右下腹部痛は消失し,術後6日目に退院した.
要旨:処女膜閉鎖症は膣の一部が閉鎖するいわゆる鎖陰(gynatresia)の一種で,大部分が胎生期の尿生殖洞の発生異常に由来するもので,多くが思春期に発症する.月経が来ても排出されない潜伏月経の状態で,腟腔内に血腫が貯留し膣留血腫,子宮血腫や卵管血腫を形成する.その結果,月経周期に一致した周期的下腹部痛(月経モリミナ)を訴えることが多い.貯留血腫の増大に伴い骨盤腔内臓器が圧迫を受けた場合には排尿困難,尿閉,便秘や腰痛などの症状が出現することもある.本邦集計例65例で11歳〜13歳の初経年齢症例が61%を占める(図).
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