図2と図3で心嚢内に血液と思われる液状内容物(△)を認め.原因は図1〜図5で上行大動脈および下行大動脈は剥離内膜(↑)を示し,胸部大動脈解離(Stanford A型)である.図4と図5の腹腔動脈,図6〜図9の上腸間膜動脈(SMA)起始部に血流障害は認めず,両側腎蔵も良好な造影効果を示しているのに下行結腸(D),S状結腸(S)と直腸(R)以外の,SMA領域の腸管壁は造影されていない,または造影が極めて弱いことに気づけばその原因を検索する.SMAは図6から始まり,追跡すると図10で閉塞し(▲)造影されなくなった.SMA起始部から約6cm末梢での閉塞だから塞栓症である(塞栓症は起始部から3〜8cmの部位で,血栓症は起始部で起こる場合が多い).心房細動は認めなかったので,大動脈解離と関連した原因があるのであろう.胸部大動脈解離に対して緊急手術が行われたが,CTの腹部所見は見逃されたようで,翌日腹部膨満が増大し圧痛を認めたので開腹手術となった.Treitz靱帯から15cmの空腸から下行結腸中央部まで壊死に陥っており,切除し空腸瘻が造設された.大動脈解離例では腸管の血流障害がないか細心の注意をはらうべきである.
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