文献考察:Richterヘルニア
1)Richterヘルニアによるイレウスの2手術例 本邦報告124例の検討(表)
Author:横井川規巨(回生会宝塚病院 外科), 米倉康博, 池袋一哉, 小島善詞
Source:臨床外科(0386-9857)61巻13号 Page1679-1682(2006.12)
2)Tito wa,Perez-Tamayo A:Richter and Littre Hernias.In:Hernia:Nyhus LM,Condon RE.J.B.Lippincott Company.Philadelphia.311-316,1995.
2文献のまとめ:Richter(型)ヘルニアとは,腸管壁の一部(通常は腸間膜対側)のみが嵌頓・絞扼する特殊なヘルニアで,腸壁ヘルニアとも呼ばれる(図A,図B).Scarpaの法則(図C)があり,腸壁全周の2/3以上が嵌頓すると完全腸閉塞を起こし, 1/3だけでは腸閉塞を起こさず鼠径部痛や大腿部痛だけを訴えることがある.半周程度では不完全閉塞を起こす.部位は大腿ヘルニアが最も多く(大腿ヘルニア軟頓の10-33%),腸管は回腸が多い.臨床症状は3つのグループに分けられる.第一(1/2-1/3)は明らかな腸閉塞を呈するもので,絞扼性になる前に手術されるので治療成績がよい.第二のグループ(1/3)は腸閉塞症状がなく,絞扼のみを呈する.診断が遅れ死亡率が高い(20-60%).第三(1/3-15%)は腸管壊死から大腿部の皮膚瘻を形成して診断されるもの.腸閉塞の程度が軽いとはっきりしない腹痛と吐き気だけのこともあり,大腿部の発赤,圧痛を伴う腫瘤が診断の決め手となるので,その疑いをもって注意深く診察することが大事である.腹腔鏡下手術が爆発的に普及し,そのトロカー挿入部(≧lcm)でのRichterヘルニアの報告が増えている.Littre HerniaとはMeckel憩室がヘルニアを起こしたものである.我が国の集計(表)では,平均年齢は67歳で,男女比は1:2で女性に多い.発生部位は大腿部,鼠径部,閉鎖孔,腹壁の順に多い.
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