図1で盲腸(CE,TI:回腸末端)と下行結腸(DC)に拡張はないので,拡張した小腸は麻痺性イレウスではなく腸閉塞である.小腸閉塞を疑えば,外ヘルニアの嵌頓を除外(図12より尾側は省略)した後,次に考慮するのは絞扼性小腸閉塞かどうかである.CTで絞扼性を疑う所見は,1)腸管壊死所見(下記症例参照),2)腹水,3)拡張した小腸がgasless (ガスがないか,あっても少量),4)腸間膜の浮腫,血腫または腸間膜間の腹水である.腸管壊死所見がなくても2)〜4)の3所見があれば絞扼性の可能性が高い(下記症例参照).この症例では絞扼された小腸はshort segmentなので腸間膜は描出されていないが,図10〜図12で腹水(※)があり,拡張した小腸はgaslessだから絞扼性小腸閉塞の可能性がある.筆者の経験では虫垂切除,S状結腸切除や婦人科手術後の絞扼性小腸閉塞例では,絞扼された小腸は骨盤腔内に位置する例が圧倒的に多いので, closed loopを証明するために図10のAと1から追跡を始めると,両者とも図8で閉塞しclosed loopを形成している.図7で虚脱した小腸(SB)があり,図7の丸数字1から図1の丸数字13が単純閉塞の小腸である.絞扼された小腸壁は良好に造影され,壊死はない(viable)と診断する.2日後の手術で,後腹膜筋膜に欠損部(図A:▲)があり,そこへ10cmの小腸がヘルニアを起こし絞扼されていた(図B:↑).虚血状態であったが温生食水で温めたら色調は改善し,切除は不要であった.2日間も絞扼されて壊死のない極めてまれな症例である.
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